こんにちは。
ワタナベミエです。
今回はある支店で出会った支店長の品格についてお話しします。
銀行支店長の姿とは
普段の温和な性格
銀行の支店長といえば、どこか厳格で威厳のあるイメージを抱く人も多いでしょう。
しかし、今回お話しする支店の支店長はそんなイメージとは少し違う人です。普段は物静かで、温和な性格がにじみ出ていて、初対面のお客さまでも緊張せずに話しができる雰囲気を持っている人でした。部下に対しても、威圧的な態度や押し付けがましさは一切なく、いつも周囲に安心感を与えてくれた人なのです。
信念の強さと説得力
そんな支店長が本領を発揮するのは、誰もが「難しい」と感じる融資案件に挑むときです。
あるとき、どうしても支店として推進したい融資案件がありました。私を含めた部下たちは「この材料だけでは、本部を説得するのは難しい」と弱気になっていましたが、支店長は冷静に「なぜこの融資を進めるべきか」を説明し始めました。その言葉には無理やりではなく、しっかりとした根拠に裏打ちされた説得力がありました。それは、「この案件を絶対通したい」という信念の現れだったと思います。
部下への配慮と洞察力
支店長には、芯の強さがありました。しかし、それは押し付けがましいものではなく、あくまでも部下たちの意見を尊重した上での行動でした。いつも人の話にじっくり耳を傾け、相手の言葉を一度しっかり受け止める。その上で、自分の考えを丁寧に伝えるのです。その姿勢は、部下として働く私たちにとっても、とても学びになるものでした。
この支店長は部下一人ひとりのことをよく見ている人でした。驚いたのは、私が同僚と話し合いながら仕事を進めている様子をどこで見ていたのかわかりませんが、あるとき「あなたはみんなを引っ張っていく力がある。仕事もできるし、ぜひ支店長を目指してほしい」と声をかけてくれたことです。
普段は外回りで支店にいないことが多い人なのに、部下の長所をしっかりと見抜いている。その洞察力に感心すると同時に、「支店長に信頼されているんだ」と感じられて、心から嬉しかったのを覚えています。
規律に厳しい一面
一方で、支店長は規律にも厳しい人でした。例えば、お客さまからの融資相談については「3日以内に回答する」というルールがあり、それを守らない部下にはかなり厳しい口調で注意をしていました。
それは決して怒りに任せたものではなく、「お客さまに誠実であることが銀行員としての基本」という考え方からくるものでした。支店長がその姿勢を一貫して示していたからこそ、私たちも自然と規律を守り、仕事に真剣に向き合うことができたのだと思います。この姿勢が、支店全体の仕事の質を高めていたのだと思います。
お客さまからの信頼感
お客さまからの信頼も絶大でした。ある女性社長が「支店長っていつも笑顔でちゃんと話を聞いてくれるから大好きです」と話していたのを聞いたことがあります。そのときの支店長が照れくさそうに微笑んでいたのが印象的でした。普段は冷静で頼れる支店長が見せた、そんなちょっとした人間味あふれる一面も、また私たち部下にとっては魅力的に映りました。
本部との交渉力
お客さまのことを深く理解しているだけでなく、本部に対しても自分の意見をしっかり伝えていました。本部の方針にただ従うだけでなく、必要であれば本音で意見をぶつけ、支店としての意志を明確にする。その姿を見るたびに、「この人のもとで働けてよかった」「支店長がそう言うならがんばってみよう」と思ったものです。
最後に
私は責任者として重責を担う立場でしたが、支店長からの信頼を感じることで、様々な困難を乗り越えられると感じていました。「あなたならできる」と言われることで、自分自身の可能性を信じることができたと思います。優秀な上司から信頼されることほど、部下にとって嬉しいことはありません。
支店長の品格。それは、芯の強さと心の温かさが絶妙に調和したものでした。冷静さと譲らない気持ち、優しさと厳しさ、その全てが支店長の魅力となっていました。私もその支店長のように部下から信頼される存在になりたいと思っています。
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