#0002 銀行の支店長像 ① ~今と昔~

銀行の支店長

こんにちは。

ワタナベミエです!

今回は銀行の支店長像についてお話したいと思います。

銀行の支店長と聞くと、多くの人が「支店全体をまとめ、運営を指揮する責任あるリーダー像」を想像するかもしれませんね。実際、支店長は支店運営の最終責任者として、多岐にわたる業務を担っています。その責任の重さはもちろんのこと、支店を盛り立てる役割もあり、経営者的なポジションとして多くの責任とやりがいのある職務です。理想の支店長像としてあげられる要素には、以下のようなものがあるでしょう。

理想の支店長像とは

  1. 自分の意見をわかりやすく説明しリーダーシップを発揮する
    支店の規模に関わらず、経営者としての風格を持ち周囲から信頼を得る存在感。
  2. 優れたコミュニケーションスキルを備えている
    チームを統率する能力や部下を育成する力。
  3. 顧客が抱える真のニーズを把握する力
    事業の悩みや課題に寄り添い、的確で客観的なアドバイスができる洞察力。
  4. 部下のやる気を引き出す力
    部下一人ひとりの成長ビジョンを描き、モチベーションを高める能力。
  5. 組織の方向性を示す明確なビジョンを持つ
    支店が向かうべき方向性を示し、ひとつのチームとして導く力。

すべての要素を持つことは難しいかもしれませんが、これらを兼ね備えた支店長は、支店全体を盛り立てて、お客さまや部下から信頼を集める存在となります。

しかし、現在の銀行組織の中で、その「理想像」に当てはまる支店長は減少しているように感じます。数年前と現在を比較すると支店長の姿勢や行動には大きな変化がみられるのです。

かつての支店長の姿

かつては、支店長が本部と真っ向から意見をぶつけ合う姿を私は何度も見てきました。例えば、融資案件において本部が慎重な姿勢を示した際にも、支店長はお客さまの事業内容を深く理解した上で、「この会社にはこういう可能性があるので、ぜひこの融資案件を成立させたい」とお客さまの将来を真剣に考えて本部を説得する支店長の姿は、私にとっても大きな学びとなりました。

現在の支店長に見られるような、「本部に意見したり楯突いたら、自分の評判が悪くなるのではないか」といった、自らの保身とかそういったことは関係なく、お客さまのことを第一に考えて本気で仕事に取り組んでいる姿を目にしてきました。当時の支店長は発言力や裁量を持ち合わせていて、また本部の人間も支店長に対して敬意を払って対応していたと思います。

仕事に真剣に取り組む支店長の姿を目の当たりにした部下としては、支店長が本部と戦っているのだから、担当者としてできる限りお客さまのことを理解し、良い面も悪い面も考慮した上で「なぜこの融資をやるべきなのか」「融資をすることでお客さまと銀行にどのようなメリットがあるのか」また「融資をすることによる懸念事項は何か? どうすればその問題は解決されるのか?」を自分なりに真剣に考えて、本部との意見交換に臨んだものでした。

現代の支店長の姿

しかし、最近ではそうした情熱を持つ支店長は少なくなり、本部と意見を戦わせることもなく本部の決定事項に従い、ただその決定事項をお客さまに伝えるだけの「メッセンジャー」と化している支店長が目立つように感じます。

とにかく物事を荒立てないようにとか、本部の意見に従っておけば、もしトラブルになった場合に自分がその責任を負わなくてもよいとか、自分の意見を主張することで自分が不利な立場に立たされるのでは…といった自らの保身を最優先にして物事を考えている人が多いように思います。

また、コミュニケーション能力の欠如も問題だと感じています。 かつては、どこの支店でも取引先の社長が支店長と何気ない話をしに、フラッと支店にやってくるといった光景はよくありましたが、最近は融資の相談や契約がない限りはほとんどそういった光景は見かけなくなりました。

以前私が慕っていた支店長から聞いた話があります。「経営者というのは自信に満ち溢れているようで実は孤独な存在なんだ」と。「会社内部のことや経営上の問題があっても、本当に心を開いてその悩みを打ち明けられる人間がいない。だから、銀行の支店長というのはその悩みを聞いてあげる役割もあるんだよ」と。

経営者というのは常に悩みを抱えているものです。その悩みは社内の人間には言えず、まして同業者には知られたくない悩みが多いと思います。

しかし、心の内を吐露することによって、少しでも気持ちが楽になったり、前に進む勇気がでてくるのだと思います。支店長というのはその役割を担っているのではないでしょうか? 社長たちは銀行の支店長だから相談するのではなく、支店長を一人の人間として信頼するから相談に訪れていたのだと思います。表面的な関係ではそのような信頼関係を築くことは難しく、支店長の人間性や心の温かみといった部分が大きく関係してくると思います。

私はこのような変化は、組織の構造や企業文化の影響が大きいと考えます。現代の銀行では、支店長の自主性が抑えられ、本部の指示に従うことが最優先となる風潮が強まっています。その結果、支店長自身が「自分の意思を持たずに指示通り動くこと」を当たり前と感じるようになり、自主性や独自性が薄れてきているような気がするのです。支店長を画一的に管理しようとする風潮は、支店長が自分らしさを表現して仕事を進めることが難しくなってきているのかもしれません。

第2回に続く…

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