#0018 住宅ローンとつみたてNISAは両立できるのか?

資産運用

こんにちは。

ワタナベミエです。

今回は、住宅ローンを組みながら、つみたてNISAを利用して資産形成は可能なのか?ということについて考えてみたいと思います。

現在、各金融機関ではNISA口座の獲得に躍起になっています。

私の勤務している銀行でも、店頭にいらっしゃるお客さまや融資の取引先の従業員の方などに、つみたてNISAを必死にアピールしています。

最近では、住宅ローンを利用されているお客さまに、「つみたてNISAを提案しては?」という話もでています。

「果たして借金を返済しながら資産形成をすることは可能なのか?」と、疑問に思ったのがきっかけです。

NISA(ニーサ)とは?

NISA(ニーサ)とは、少額の投資(投資信託や株などを購入)で得られる利益が、非課税になる制度です。簡単に言うと、投資をして得た儲け(利益)に税金がかからない枠のようなものです。

一般社団法人投資信託協会のHPによると、もともとNISAは、2014年から「一般NISA」が、2018年から「つみたてNISA」が開始されました。当時は一般かつみたてのどちらかしか選べないこと、投資できる期間や金額に制限がありました。

これをもっとわかりやすい制度にするため、2024年から「新NISA」として『つみたて投資枠120万円/年間枠』と『成長投資枠240万円/年間枠』あわせて年間投資額360万円に拡大し、一人当たりの非課税限度額1800万円、非課税期間は無期限に改正されました。

銀行では、この新NISAのつみたて投資枠を利用した資産形成として長期の資産運用を提案しています。

つみたて投資枠を利用した運用の主な特徴として

  • 少額からコツコツ積み立てることで、リスクを抑えた運用ができる。
  • 長期・積立・分散投資に適した投資信託を購入できる。
  • 投資で得た利益に税金がかからない。

以上のようなメリットを伝え、今まで投資経験がないお客さまも含めた、幅広いお客さまに向けて提案しています。

ただ、このNISAは一人一口座しか持てず、銀行では投資信託しか購入できないことから、株やETFを購入したい場合は証券会社でNISAを開設する必要があります。

また、NISAで扱う商品は投資信託や株などの投資商品であるため、日々価格が変動し、元本が保証されず、元本割れのリスクも伴います。

住宅ローンとつみたてNISAは両立できる?

まず、住宅ローンを抱える方々は多くの場合、家計の中で大きな固定費として支払いの負担を抱えています。住宅ローンの返済は、一般的に20年~30年という長期間にわたり家計に影響を与えます。

一方で、つみたてNISAは余裕資金をもとにコツコツと資産運用を行い、長期的なリターンを目指す仕組みになっています。

NISAで扱うのは元本保証のない投資商品であり、基本的に資産運用というのは、最低限の生活資金を確保した上での余裕資金で行うものです。

この2つを同時に行うことが果たして合理的なのでしょうか。

住宅ローン控除期間の考え方

住宅ローン控除とは、一定の条件を満たすと、入居した年から最長で13年間、年末時点の住宅ローン残高の0.7%分を所得税から控除できる制度です。

住宅ローン控除が適用されている期間中は、繰り上げ返済を急ぐ必要はないという考え方もあります。控除の恩恵を最大限受けることで、手元に資金を残し、投資など他の用途に回すという選択肢は理にかなっています。

住宅ローンの控除期間が終了したら、ローンを一括返済できればいいのですが、大半の方はそのまま住宅ローンの返済を続けることになると思います。住宅ローン控除が終了するタイミングを迎えた後も、無駄な金利を払い続けて資産運用をすることには疑問を感じます。

住宅ローンの金利は確実に支払いが発生しますが、つみたてNISAを通じた資産運用はリスクが伴い、必ずしも期待通りのリターンを得られるわけではありません。

余裕資金の定義と繰り上げ返済のメリット

特に気になるのは、余裕資金という言葉の定義です。

ローンの支払いを抱えながら、毎月安定して積立を続ける余裕資金が本当にあるのか?

仮に余裕資金があるのであれば、それをローンの繰り上げ返済に回す方が、確実に金利負担を減らせるというメリットがあります。簡単な例として、1000万円の住宅ローンを1%の金利で借りている場合、年間約10万円の利息を支払う計算になります。この利息を軽減するために繰り上げ返済を選択する方が、リスクを伴う投資よりも堅実だと思うのです。

つみたてNISAの魅力と長期運用の課題

もちろん、つみたてNISAには税制優遇があり、長期的な資産形成を目指す上では魅力的な制度です。

しかし、その本来の目的は、あくまで余裕資金で行うものであるという点を忘れてはいけません。

つみたてNISAの運用は、最低でも10年、できれば20年といった長期の視点で取り組むことが重要です。この期間中、経済状況や家計の変動に対応しながら安定して積立を継続できる方が、どれだけいるのかと考えてしまいます。

住宅ローンと資産運用の両立の疑問

さらに考えると、本当に住宅ローンを抱える人が、つみたてNISAに取り組む余裕を持てるのかという疑問も浮かびます。

住宅ローンの控除を受けたいために、住宅ローンを組むという方は稀にいらっしゃいます。しかし、大半のお客さまはローンを利用するということ自体、手元資金が不足している状況を意味する場合が多いです。

そんな中で、資産運用という選択肢を提示することが、本当にお客様のためになるのか。

これが、『住宅ローンを利用されているお客さまを中心に「つみたてNISAを提案しては?」という提案』に対して、私が感じる違和感の根本です。

銀行員としての提案の在り方

銀行員として、お客様にとって最善の提案をすることが求められます。

しかし、それが本当にお客様の利益につながるものでなければなりません。ただ商品を販売することが目的となってしまっては、本末転倒です。

お客さまによって考え方は一人ひとり違いますが、それぞれのお客さまの要望を聞き取り、本当はどうしたいかや家計の状況を考えた上で資産運用を提案すべきではないかと思います。

住宅ローンを抱えるお客様に対しては、まずはローンの返済負担を軽減する方法を優先的に検討するべきなのではというのが、私の意見です。

まとめ

住宅ローンとつみたてNISAを同時に進めることは、必ずしも合理的な判断とは言えず、ケースバイケースだと思います。

特に、ローン返済の負担が重い状況では、繰り上げ返済の方が堅実な選択肢となることが多いです。資産運用は余裕資金がある場合にのみ行うべきものであり、その基本に立ち返るべきではないでしょうか。

同じような疑問を持たれる方はいらっしゃるでしょうか。ぜひ、ご意見をお聞かせいただければ嬉しいです。

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