こんにちは。
ワタナベミエです。
今回の記事では、リスケ申請時に必要となる重要な心構えを、5つのチェックポイントにしてご紹介します。
リスケの申請は「企業再建の覚悟」が問われるタイミング
リスケ(融資返済条件の変更)は、経営が苦しい企業にとって一時的な資金繰りの支えになります。
しかし、単なる「延命措置」に終わるか、そこから再建に向かえるかは、事前の準備にかかっていると言っても過言ではありません。
金融機関は、リスケを申し込んできた企業に対して「どれだけ本気で立て直そうとしているか?」を見極めています。その判断材料になるのが、今回ご紹介する5つのチェックポイントです。
チェックポイント① 自社の損益とキャッシュフローを正しく把握しているか
なぜ自社の損益とキャッシュフローを把握することが重要なのか?
リスケをしても業績が改善しない企業の多くに共通するのが、「黒字か赤字かはなんとなくわかるが、実際の資金繰りは把握できていない」という状態です。
つまり、「利益は出ているのに資金が足りない」「資金が回っているが赤字体質」という矛盾の本質を理解していないことがその根底にあります。
この認識が甘いままでは、リスケ後に本当に必要とされる「経営判断」が出来ません。
対策① : 損益とキャッシュの「違い」を理解する
損益計算書(P/L)とキャッシュフロー(CF)は似て非なるもの。
例えば:
・売上は立っていても、入金までに時間がかかるのであれば、その間の資金繰りは苦しい
・減価償却費は費用に計上されるが、実際には現金支出はなし
📌 簡易キャッシュフロー表を自分で書いてみる
⇒ 収入と支出を月ごとに一覧にし、手元現金の増減を把握する
⇒ 最低でも「今月・来月・再来月」までの資金繰り予測を作る
対策② : 資金繰り表を”経営者自身”が作る または内容を理解できるようになる
・税理士任せ、経理担当者任せでは”他人事”になりがち
・自分で作るのが無理でも、数字の意味を説明できるようにすることが大切です
📌 月末に「資金繰りミーティング」を設ける
⇒ 売上予定、入金予定、支払予定を一覧にして確認
⇒ 毎月「このままでいくと預金残高はどうなるか?」を数字で把握し見える化する
対策③ : 損益分岐点と資金ショートラインを把握する
・会社の「最低限、稼がなければいけない金額(損益分岐点)」を把握する
・毎月の固定費・変動費を整理し、「売上が〇〇円以下だと赤字になる」と分かるようにする
📌 対策 : 資金ショートのXデーを想定する
⇒ 「このまま売上が上がらなければ何か月後に資金が尽きるか」
⇒ そこから逆算して、手を打つタイミングを明確にする
対策④:金融機関に「数字で語れる経営者」と認識してもらう
- 銀行が求めているのは「数字がわかる経営者」
- 毎月、資金繰り表と損益をもとに自ら説明できると、リスケ後の信頼感がまったく違う
📌 資料を渡すだけでなく「説明する場」を作る
→ 担当者との面談で、どうしてこうなったか・今後どうなるかを数字で語る
まとめ
リスケ後の再建には、「感覚で経営する」から「数字で経営する」への転換が不可欠です。
キャッシュフローを制する者が、経営再建を制します。
チェックポイント②「会社をどうしたいのか」を自分の言葉で語れるようにする
なぜ「自分の言葉」が重要なのか?
リスケ後の再建では、社長自身が「どこに向かっているのか」を明確に持ち、それを社内・社外に自分の言葉で伝えることが極めて重要です。
なぜなら、以下のような現象が現場でよく起こるからです:
- 社員:「結局、社長は何をやりたいのか分からない」
- 金融機関:「再建のゴールが見えず、支援の判断ができない」
- 社長自身:「目の前の資金繰り対応ばかりで、進んでいる実感がない」
対策①:“再建後のあるべき姿”を紙に書く
まずは抽象的でかまいません。下記のような問いに答える形で、自分の言葉を「紙」に落としましょう。
- 3年後、自分の会社はどうなっていたいか?
- どの事業を柱にするのか?
- どの顧客層を大事にしているか?
- 社員はどんな気持ちで働いているか?
- 自分はどんな役割をしていたいか?
📌 実践法:A4用紙1枚で「会社の未来像」を書き出す
⇒ 他人に見せるためではなく、自分の軸を確認するため
対策②:言語化した未来像を「数値」に落とし込む
未来像を語れるようになったら、次は経営指標に変換していきます。たとえば:
ビジョンの言葉 | 数値での置き換え例 |
---|---|
主力事業に集中したい | 不採算部門を1年以内に撤退 |
営業力を強化したい | 月間訪問件数を現状の1.5倍に |
社員を大切にしたい | 離職率○%以下・教育予算○万円/人 |
📌 ポイント:「定量化」すれば、判断や評価ができるようになる
対策③:幹部や支援者と“話すことで磨く”
言葉というのは、紙に書くだけでは洗練されません。人に話すことで研ぎ澄まされます。
- 社内会議で語る
- 金融機関との面談で説明する
- コンサルや士業に説明する
📌 話してみて「相手が理解できるか?」を基準にブラッシュアップ
⇒ 伝わらない=まだ曖昧、自分の中で腹落ちできていないサインかもしれません。
対策④:「意思決定に迷わない軸」として使う
言語化された未来像は、**日々の経営判断の“基準”**になります。
- その事業は「目指す未来」に合っているのか?
- その人材採用は、ビジョン実現に必要か?
- その投資は、3年後の会社像に貢献するか?
📌 一度言語化したら、迷った時は必ず立ち返ること
補足:銀行も見ている「社長の言葉の重み」
銀行担当者が心の中で重視しているのは「この社長は、何を目指しているのかが自分の中で整理できているか?」という点です。
それがあるかないかで、支援する価値の見極め方が変わってきます。
チェックポイント③「経営者としての覚悟があるか」
覚悟とは何か?よくある誤解
まず、ここで言う「覚悟」とは、単に「頑張ります!」といった精神論ではありません。
銀行や支援者が求める「覚悟」とは、以下のような行動の伴った姿勢です。
- 自分の責任として現状を直視し、逃げない
- 痛みをともなう決断を実行できる
- 支援してくれる相手にも「この人なら賭ける価値がある」と思わせる
よく見られる「覚悟が伝わらないケース」
- 社長が「まだ何とかなる」と問題の深刻さを直視していない
- リスケ中なのに赤字部門をそのまま温存する
- 家族・役員の協力が得られておらず、社内がバラバラ
- 資産の売却、私財の投入、給与の見直しなど痛みを避けている
対策①:「自分の責任」で現状を語る
赤字や資金繰りの悪化を「外部環境」や「他人のせい」にしていませんか?
❌「円安のせいで仕入が…」
✅「その変化に対応できなかった自社の判断が甘かった」
📌 銀行は「社長自身が自責で語れるか」を見ています。
対策②:固定費・役員報酬・私的資産に手をつける覚悟
再建に必要なのは、「誰か」ではなく「自分」が傷みを引き受ける決断です。
例えば:
- 役員報酬を一時的にカット
- 経営に不要な遊休資産の売却
- 個人所有の資産でも担保化や提供を検討
📌 自分の立場を守りながら他人の協力だけを求めると、支援は得られません。
対策③:「嫌な決断」を先送りしない
覚悟とは、やりたくない決断を“今”やることです。
例えば:
- 事業の縮小や撤退の決断
- 長年付き合いのある取引先との条件交渉
- 親族や古参社員との対話と役割の見直し
📌 「社長が決めなければ誰も決められない」場面での判断こそが、覚悟の証です。
対策④:家族や幹部に「巻き込み宣言」をする
覚悟を行動に落とすには、「一人で背負い込まない」ことも大切です。
- 家族に現状を正直に説明し、理解を得る
- 幹部と定期的に話し合い、再建の道筋を共有する
- 金融機関との面談に、幹部を同行させる
📌 「孤独に戦う」よりも「共に立て直す」ことで、支援も得やすくなります。
その②に続く…
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