その①の続きです。
チェックポイント④「専門家に相談しているか」
なぜ、“専門家の力”が必要なのか?
リスケ(返済猶予)はあくまで時間を稼ぐ手段です。業績が改善しなければ「時間稼ぎ」で終わり、さらに状況が悪化するケースを現場で何度も目にしています。
だからこそ、短期間で改善の道筋を描けるかどうかが勝負になります。
このとき、社長一人だけで再建を進めるのは現実的ではありません。数字の分析、資金繰りの精度、法的整理の判断、人事や税務戦略…リスケ期間の経営立て直しは「総力戦」だからこそ、専門家の知見が不可欠です。
専門家に相談すべき3つの理由
理由①:「現状の深刻度」を客観的に把握できる
- 自分では「まだ大丈夫」と思っている状況が、
実は“再建不能寸前”であることも珍しくありません。 - 銀行との付き合いが長いと「これまでも何とかなった」という錯覚に陥りがち。
📌 第三者の冷静な目線で現実を突きつけてもらうことが第一歩
理由②:「正常化に必要な手段の選択肢」が増える
- 自社だけでは思いつかない改善策、
法的整理や私的整理などの活用方法、助成金・補助金などの制度支援 - 特に中小企業の場合、「知らないこと=選べないこと」になってしまう
📌 「選択肢を持てるかどうか」で経営の自由度は大きく変わる
理由③:「金融機関に伝えるストーリー」が整理できる
- 銀行との面談で「感情」や「抽象的な希望」ばかりを語っていませんか?
- 再建のシナリオには、「数字」と「筋の通った説明」が必要です。
📌 専門家と一緒に資料を作ることで、信用度が大きく変わる
どんな専門家に相談すべきか?
専門家の種類 | 主な役割 | 相談すべき内容 |
---|---|---|
中小企業診断士 | 経営改善・資金繰り支援 | 経営改善計画の作成、財務改善の方向性 |
税理士・会計士 | 数字の整理と申告対応 | キャッシュフロー分析、試算表の精度向上 |
弁護士 | 法的リスク・債務整理 | 債権者対応、リスケ・破産・民事再生の判断 |
社会保険労務士 | 人件費・雇用調整 | 助成金対応、人件費圧縮や雇用継続策 |
中小企業活性化協議会(公的) | 中立的な支援の調整役 | 複数金融機関との調整、再建計画の評価 |
専門家に相談する際のポイント
「相談のタイミング」は早いほど良い
- 赤字が慢性化し、キャッシュが底をついてからでは選択肢が激減します。
- 「このままでいくとまずいな…」と思った時点で、まずは無料相談やセカンドオピニオンを活用。
「丸投げ」はNG、自分で理解しながら進める
- 専門家は“代わりに経営してくれる人”ではありません。
- アドバイスを「なぜそうするのか?」と理解する姿勢が重要です。
📌 再建を本気で目指す姿勢があってこそ、専門家も本気で関わります。
「金融機関の信頼」も変わる
- 経営改善計画書などを専門家と一緒に提出すると、信用度が段違いです。
- 「社長一人ではなく、体制を整えて本気でやっている」と伝わるため。
まとめ:リスケ期間の経営立て直しは「一人では無理」と認めることが出発点
専門家に相談することは、弱さではなく、再建に向けた強さの証明です。
孤独になりがちな経営者だからこそ、プロと連携することで道が開けます。
チェックポイント⑤「社内に変化を促す仕組みがあるか」
リスケ後に「元に戻ろうとする力」が働く理由
リスケ直後は危機感が社内にあるものの、数か月も経つと徐々に日常が戻り、社員の意識も緩んでしまいがちです。
これは人間の本能的な防衛反応でもあり、変化より「現状維持」を選ぶほうが楽だからです。
📌 だからこそ、「変化を定着させる仕組み」がなければ、再建は進みません。
なぜ“仕組み”が必要なのか?
- 社長の「想い」だけでは社員は変わらない
- 社員全員が毎日意識できる「共通言語」が必要
- 定着するまでは、“強制力”のある運用が必要
変化を促す「仕組み」づくりの具体策
対策①:経営数値を“見える化”して共有する
変化を促すには、まず現状の課題を社員全員が「見える形」で把握する必要があります。
例えば:
- 月次の売上目標・損益の進捗をホワイトボードや社内SNSに掲示
- チーム別にKPI(重要指標)を設定し、数字で成果を見せる
- 日報・週報で「数字ベースでの改善提案」を求める
📌 「感覚」ではなく「数値」で共有することで行動が変わる。
対策②:定例の“改善ミーティング”を制度化する
口頭での注意や場当たり的な対処では、行動は定着しません。
例えば:
- 毎週〇曜日は「改善報告会」として全社員で改善案を発表
- 月1回「ムダ削減会議」を実施し、現場のコスト見直しを行う
- トップダウン型ではなく、現場からのボトムアップ提案を仕組みに組み込む
📌 定例化することで「考える文化」「変える文化」が根づく。
対策③:評価やインセンティブと連動させる
人は「損得」に動かされる生き物です。
行動変容には、それが評価や報酬と結びついているかが鍵になります。
例えば:
- 小さな改善提案でも「改善提案賞」や報奨金を設定
- 部門ごとの目標達成率でチームインセンティブを導入
- 逆に“協力しない姿勢”にはマイナス評価も含める
📌「変わらなければ損、変われば得」になる制度を設計する。
対策④:社長自身が“変化の象徴”になる
制度やルールだけでなく、「社長自身が本気で変わっているか」を社員は見ています。
- 朝夕礼で、改善や再建に向けた自分の行動を語る
- 役員報酬の削減や、会議の簡素化など「痛みを引き受ける・無駄を削減する姿勢」を見せる
- 経営者の変化が「言行一致」であることが、社員の変化を促します
📌 リーダーが本気を見せなければ、組織は変わりません。
まとめ:変化は一時的なものではなく、「仕組み」で継続させる
リスケ後に企業が再建できるかどうかは、一時的な危機感ではなく、日常の行動をどう変えるかにかかっています。
そのためには、感情や精神論ではなく、
・数字
・会議
・評価制度
・経営者の行動
といった**“しくみの力”**が必要です。
リスケは “対話”と “行動” の積み重ねから
以上、リスケ申請時の心構えとして5つのポイントをご紹介しました。
リスケは最終手段ではなく、企業再建への再スタート地点です。しかし、その後の行動によっては、再起のチャンスも、信用をも失う結果にもなってしまいます。
経営者としての本気度を、行動と数字で示すこと。
それが、金融機関との信頼関係を築き、再び“経営を正常化”するための唯一の道です。
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