こんにちは。
ワタナベミエです。
今回の記事は銀行の転勤の際に私が感じる違和感や偏見の話です。
新しい着任先での女性融資担当者に向けられる偏見や理不尽な評価について、現場のリアルな声をお届けします。
銀行員にとって転勤は避けられない現実
銀行に勤めていれば、転勤は避けて通れないものです。
総合職であれば、数年ごとの人事異動は当たり前。家庭があっても、子どもがいても、支店が変われば、また一から新しい土地、新しい人間関係、新しい業務に対応していくことが求められます。
これは男女を問わず、多くの銀行員が経験していることです。
地方銀行の転勤は「地域内限定」だが…
私が勤める地方銀行の場合、転勤といっても基本的には県内や近隣エリアが中心です。
メガバンクのように遠方や海外に飛ばされることはほとんどなく、生活環境が大きく変わることもあまりありません。また、商慣習や顧客層もある程度共通しているため、実務面での戸惑いも少ないと言えるでしょう。
しかし、だからと言って異動のたびにすべてがスムーズにいくわけではありません。特に支店の雰囲気や支店長の方針次第で、居心地の良し悪しは大きく左右されます。
着任早々に実力を試される「統括」ポジション
そんな中、私はこれまで十数年にわたり融資業務に携わり、複数の支店で経験を積んできました。法人や個人の営業、事業性融資の現場まで、幅広く案件を担当し、評価もいただいてきたつもりです。
にもかかわらず、新しい支店に「融資統括」として着任すると、決まってこう聞かれるのです。
「今まで統括やったことあるの?」「どこの支店で統括してたの?」
当然のように、私の融資の実力を疑うような物言いの支店長たち。着任初日から“試される”雰囲気に、正直うんざりしてしまいます。
支店長からの「的外れな提案」に感じた違和感
特に印象的だったのは、ある支店でのやり取りです。赴任して間もなく、支店長からこんな言葉をかけられました。
「あなた、人当たりがいいから、融資よりも個人のリテール部門、それも資産運用のほうが向いてるんじゃない?」
本人は「褒めてるつもり」と言っていましたが、融資一筋でやってきた私にとって、その発言は明らかに的外れでした。スキルや実績ではなく、見た目や性格の印象だけで適性を判断されているように感じ、何とも言えない虚しさと残念な気持ちがこみ上げてきました。
そしてなにより、そのような発言が、同じような経歴を持つ男性職員に対してされているのを、私は一度も聞いたことがありません。
なぜ女性融資担当者だけが疑問視されるのか
問題なのは、「女性だから本当に統括が務まるのか」「現場での指導はできるのか」という無言の“疑念”が、まだまだ根強く残っていることです。本人たちは悪気なく言っているつもりなのかもしれませんが、それがかえって厄介です。
こういった発言は、特に女性の融資担当者に多く向けられる傾向があるように感じます。男性の行員には問われないような質問が、女性には当たり前のように飛んでくる。女性というだけで、実力を証明しなければならないのか?と理不尽さを感じます。
評価の物差しが男女で違っている時点で、到底フェアな職場とは言えません。
経歴を見れば分かるはずなのに
異動にあたっては、行内で人事資料や評価が共有されているはず。上司である支店長が私の人事情報や業務経歴に目を通すのは当然のことです。それでも「統括経験はあるの?」と聞かれるということは、そもそも確認していないか、確認しても軽視しているのでしょう。
これは単に支店長個人が無能という話ではなく、組織的な問題です。
特に深刻なのは、こうした偏見が「意図的な差別」ではなく、“当たり前”として無意識に行われていること。支店長自身は悪意がないつもりでも、女性の能力を過小評価する態度が知らず知らずのうちに支店内に広がり、職場全体にゆがみを生み出します。
やがて、「融資=男性」「リテール=女性」という固定観念が根づき、女性がどれだけ努力しても本来の実力で評価されない職場になってしまうと思います。
その結果、職員間の信頼や一体感が薄れ、人材が活かされず、顧客へのサービスにも悪影響が出てしまう…。それこそが、支店の「組織力」をじわじわと弱体化させる要因ではないでしょうか。
同じ立場の人に伝えたいこと
当初はこのような経験をするたびに、悔しさや怒りを感じていましたが、最近は『あぁ、また始まったよ…』と心の中で思いつつ、淡々と経歴を説明をしています。
しかし、そういう気持ちを押し殺してきた人は、私以外にもたくさんいるはずです。融資業務に関わらず、特に男性と同じ業務を長年やってきた方なら、似たような経験をお持ちかもしれません。
経歴や実績は、性別とは関係ありません。組織の中で、実力が正当に評価される仕組みと文化が根づいてこそ、本当に強い銀行になるのだと信じています。
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